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タイトル | 縦隔炎の診断法について |
日付 | 2010-08-17 |
内容 |
2010.8.16 縦隔炎の診断法について
縦隔炎(じゅうかくえん)は心臓・大血管手術後に生じる感染性合併症の一つです。縦隔とは、左右の肺と胸椎・胸骨に囲まれた部分を指します。縦隔炎になると、手術部位である心臓や大血管の周囲に感染を発症して膿が貯留します。胸骨骨髄炎なども合併し、胸部正中創から膿が出始めます。 創が発赤して膿がでてくるのが縦隔炎の典型例ですが、その段階では感染が進行し、治療に難渋することも少なくありません。できればその前段階、つまり正中創がきれいな段階で、いかに早期に縦隔炎を診断するかが、縦隔炎の治療を成功に導く秘訣のように思います。 では、正中創に感染兆候がない状態の患者で、どのような所見があれば縦隔炎の可能性が高いのか、自験例から得られた所見を以下に列記します。 ? 38度以上の発熱 ? 安静時の胸痛(創痛) ? 胸骨の動揺 ? 白血球数>20,000/mm2 ? 血液培養採取数時間で菌陽性が判明 ? 超音波検査で皮下脂肪層にfluid貯留→穿刺で膿を確認 では、実際の診断手順を示します。順調に経過している患者さんが突然38度以上の発熱と安静時の創痛(胸痛)を訴えれば、血液検査と血液培養を行います。白血球数が20,000以上であれば縦隔炎を疑い、造影CT 検査を行います。胸骨の離開、縦隔内にair contaminationを認めれば縦隔炎の補助診断となりますが、正中創に感染兆候がない早期ではair contaminationは認めず、胸骨離開が唯一の所見のこともあります。従って造影CT検査のみでは縦隔炎の確定診断はつきません。CTで診断がつかない時には創部超音波検査を行います。超音波検査は大変有用な診断ツールです。12MHzリニアプローベを用いて、正中創皮下脂肪層に流動性のあるlow echoic massがあるかないかをチェックします。もしこれを認めれば、性状確認のため穿刺を行います。この穿刺排液が膿であれば縦隔炎と確定診断します。
とはいえ、縦隔炎の診断には悩むことが多いのが実情です。その2例を提示します。 【Case 1】 大動脈弁置換術+冠動脈バイパス術を施行したが、術後8日目に鎮痛剤が効きにくい創痛を発症した。その翌日に38.5度の発熱を認め、血液検査で白血球数が24900/mm2(前日10500/mm2)と急上昇した。手術創(胸部正中創)に発赤や浸出液などの感染兆候を認めなかった。造影CT検査(図1)を行ったところ、胸骨の離開を認めたが、縦隔内にair contaminationは認めなかった。縦隔炎の確定診断に至らず、抗生剤(ザイボックス®)投与を開始した。翌日、前日に提出した血液培養からMRSAが検出された。依然として正中創には感染兆候を認めなかった。創痛は間欠的に続いていた。創部超音波検査を行い、皮下脂肪層に流動性のあるlow echoic massを認めた。穿刺を行うと茶白色の膿であった。縦隔炎と診断し、手術を行った。
【Case 2】 弓部全置換術を施行し、順調に経過していた。術後5日目、夜間睡眠時に創痛を自覚し、数時間後に悪寒を伴う38.8度の発熱を認めた。手術創に感染兆候を認めず、胸骨の動揺もなかった。血液検査を行うと、白血球数11500/mm2、CRP 13 mg/dlと急激な悪化は見られなかった。解熱剤の内服を行い、36度台まで解熱した。術後6日目にも安静時の創痛を認めたが、手術創はきれいであった。創部超音波検査ではlow echoic massを認めなかった。夕方に38度の発熱あり、血液培養を提出した。術後7日目にも38度台の発熱が続くため造影CT検査(図2)を施行した。胸骨離開は認めなかったが、縦隔にair contaminationを認めた。胸骨離開がないのにair contaminationがあったため、術後状態との鑑別が困難であった。手術創に感染兆候は認めなかった。血液検査では白血球数15000/mm2、CRP 35 mg/dlとCRPの急上昇を認めたが白血球数が20000以下であった。血液培養の結果はグラム陽性球菌であったため、MRSAを疑ってザイボックス®の投与を開始した(後日、血液培養のグラム陽性球菌はMSSAと判明し、抗生剤をザイボックスからセファメジンに変更した)。術後8日目は発熱を認めなかったが、血液検査でWBC 20200/mm2、CRP 45.5 mg/dlと上昇していた。手術創に感染兆候はなかったが、胸骨の動揺が出現した。創部超音波検査を行い、脂肪層に流動性のあるlow echoic massを認めたため、穿刺を行った。膿性浸出液であったため、縦隔炎と診断し、手術を行った。
縦隔炎の診断は時に困難であり、さらに心臓外科医も縦隔炎を認めたくない、縦隔炎の手術をしたくない、こともあって診断が遅れたり、確定診断に至ってから手術を行うため感染コントロールに難渋することがあります。感染の確定診断は“膿”の確認です。従って造影CT検査で確定診断に至らない場合は早急に創部超音波検査を行い、low echoic massを見つけて穿刺で膿の確認ができれば、いたずらに抗生剤投与とCTで経過観察するよりはより早期に手術を行うことができると思います。 |
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